台湾では出産後の女性が「坐月子(ズオユエズ)」と呼ばれる特別な養生期間を過ごします。これは単なる休息ではなく、お母さんの心身回復と新しい家族との絆を深める大切な時間として、2000年以上にわたって受け継がれてきた文化です。
坐月子の歴史と意味
「坐月子」の起源は漢朝時代まで遡り、中医学の理論に基づいています。出産により血液不足状態となった女性の身体が、約1か月(30〜42日間)かけて妊娠前の状態に回復するという考えです。昔から「做得好、天天起得早、做不好、半生虛到老」(うまくやれば毎日元気、うまくやらなければ半生虚弱)と言われ、産後ケアの重要性が強調されてきました。
現代の月子中心(産後ケアセンター)
近年、台湾では専門の「月子中心(ユエズジョンシン)」が急速に普及しています。これらの施設は高級ホテルのような設備を備え、24時間体制で産婦と新生児をサポートします。専門栄養士による月子餐の提供、助産師による授乳指導、ベビーケアサービス、さらにはスパやヨガクラスまで完備されています。働く女性の増加により、家族に負担をかけずに専門的なケアを受けられるこうした施設への需要が高まっています。

最近の月子中心はベネフィットがたくさんついた高級な産後ケアセンターが注目されているよ!いろんな企業が経営していて熾烈な戦いを繰り広げているよ~
月子餐:伝統的な産後食
坐月子期間中の食事「月子餐(ユエズツァン)」は、身体の回復と母乳分泌促進を目的とした特別な料理です。麻油鶏(ゴマ油チキン)、豬腳花生湯(豚足落花生スープ)、紅棗桂圓茶(ナツメ龍眼茶)などが代表的で、すべて温性食材を使用します。逆に冷たい食べ物、生もの、刺激の強い食べ物は避けるのが鉄則です。現代では栄養学の知識も取り入れ、より科学的なメニュー構成となっています。
坐月子の禁忌事項
伝統的な坐月子には多くの禁忌があります。洗髪・入浴の禁止、冷水の使用禁止、外出禁止、重いものを持つことの禁止などです。「月内風(ユエネイイフォン)」と呼ばれる産後の体調不良を防ぐためとされています(俗に言う「産褥熱」)。現代では衛生面の観点から緩和されている部分もありますが、十分な休息と保温は今でも重視されています。



昔は風邪をひくからということで洗髪も禁止だったようだけど、今はドライヤーがあるので大体の人が髪を洗うよー。1カ月洗わないのは気持ち悪いもんね。
台湾の坐月子文化は女性の健康と家族の絆を大切にする素晴らしい文化だと思います。最近でこそ日本も「産後ケア」という言葉が一般的になってきましたがもっと普及してほしいです。