台北駅と中山駅で発生した無差別襲撃事件の全容(12月20日追記)

下部に新たに分かった情報を追記していきます!

治安が良いと言われる台湾でとっても痛ましく、悍ましく、悲しく、怖い事件が起きてしまいました。

事件の概要

2025年12月19日午後5時24分頃、台北市内のMRT(地下鉄)で、張文容疑者(27歳)による無差別襲撃事件が発生。この事件により、容疑者を含む4名が死亡、9名が負傷するという、台湾社会を震撼させる惨事となった。

事件自体も悲惨であるが、何が一番怖いかというと誰しもがよく行く場所であること。台北在住日本人なら頻繁に買い物などで行く場所である。東京は大きい都市だが、それに比べ台北は狭いので台北駅や中山駅を使う頻度はとても高い。完全に被害者が自分であってもおかしくないという現実がさらに恐怖を感じる。

事件の経緯

第一の犯行現場:台北駅

張容疑者は午後5時24分頃、まず板南線台北駅のM7出口付近で発煙筒と疑似ガソリン弾を投擲(とうてき)。煙が立ち込める混乱の中、刃物を持って通行人を襲撃。57歳の余氏(男性)が左背部を刺され、肺と心臓を貫通する致命傷を負い、台湾大学病院に搬送されるも、午後7時19分に死亡が確認された。

余さんの妻によると、夫は「正義感が強く、いつも困っている人を助ける人だった」とのことで、容疑者を制止しようとして犠牲になったとみられている。

第二の犯行現場:中山駅周辺

その後、張容疑者は北へ移動し、中山駅周辺の南西誠品書店(百貨店)付近で再び発煙筒を投擲し、刃物で通行人を無差別に襲撃。この場所では6名が負傷し、うち2名がOHCA(病院到着前心肺停止)状態で搬送される。

事件発生時、誠品南西店のマクドナルドでは、店員が機転を利かせてシャッターを下ろし、約10名の客をカウンター内に避難させ、危険を回避したという証言も。

台北駅と中山駅は隣あわせ。一駅といっても距離でいうと600メートルほど。地下鉄に乗ると乗り降りを合わせて10分ぐらいかかってしまうけど、歩くと5分程なので多くの人が歩いて利用しています(今回犯人は地下道を利用したの?地上?どっちだ?)。にしても最初台北駅での犯行で捕まらず、中山駅まで逃げてきたってこと?途中誰も捕まえられなかったのか?

容疑者の最期

午後6時39分頃、警察が誠品書店(百貨店)に駆けつけ包囲網を敷くと、張容疑者は売り場6階から転落。国泰医院に搬送されましたが、午後7時48分に死亡が確認された。警察は容疑者の身体から4本の刃物と1個のガソリン弾を発見している。

ニュース映像にも出てくる中山駅は、お買い物にもよく行くし、お友達とランチやカフェをする時に頻繁に行く駅。日本でいうところの渋谷や恵比寿のような繁華街。百貨店(三越)もあれば、オークラホテル、リージェントホテルといった五つ星ホテルの最寄り駅でもある。この駅に行くと、日本人10人ぐらいとすれ違うぐらい、たくさん日本人がいるし聞こえてくる。ましてや事件時は金曜日の夜で人がごった返していた!

容疑者の犯行の背景

張文容疑者(1998年生まれ、27歳)は桃園市楊梅区出身、兄と両親の4人家族。2025年1月に台北駅周辺に一人で引っ越している。

台湾には徴兵制度がある。
張容疑者は空軍憲兵警備隊の予備役として登録され、2024年11月25日に訓練に参加するよう「教育召集令」が出されていた。しかし、張容疑者は戸籍を移転したのに役所に届け出をしていなかったために、召集令が旧住所に送られた。張容疑者は実際には台北に引っ越していたので、召集令を受け取れず、結果として訓練に不参加。訓練に参加しなかったため後備指揮部(予備役を管理する部署)が調査し、「妨害兵役治罪条例」という法律違反と判断。つまり戸籍移転を届け出ないことで故意に召集を逃れたと見なされた。検察(桃園地検)が捜査した結果、張容疑者を起訴。2025年7月11日に正式に指名手配犯に。

計画的犯行の証拠

警察の調査により、以下の事実が判明している。

  1. 事前準備:12月17日から南京西路の千慧旅館に宿泊し、室内でガソリン弾を製造していた可能性
  2. 連続放火:中山区長安東路一段の2カ所と林森北路の地下室で放火
  3. おとり作戦:警察と消防が火災対応に追われている間に、台北駅で犯行に及んだ

捜査員が容疑者の住居を捜索したところ、ガソリン弾製造に使用された道具と材料が発見された。現時点では遺書は発見されておらず、犯行動機は調査中。

犯人の格好からいってとても計画的でテロを思わせる。事件後、警察が単独犯か共犯がいるかを調査した結果、今のところ単独犯が濃厚とのこと。

被害状況の詳細

死亡者(4名)

  • 台北駅:57歳余氏男性(台湾大学病院で死亡確認)
  • 中山駅周辺:蕭氏、王氏の2名(詳細調査中)
  • 容疑者:張文(転落後死亡)

負傷者(9名)

  • 台湾大学病院:33歳男性(頸部外傷、頸動脈・気管裂傷で手術中)
  • 馬偕医院:50代男性(軽度の煙吸入、経過観察中)
  • 新光医院:22歳女性(煙吸入、めまい、状態改善)
  • その他:三軍総医院内湖分院、台北市立聯合医院中興院区、三軍総医院松山分院に各1名

台北市の対応

蔣萬安市長の緊急措置

蔣萬安台北市長は事件発生直後に現場に急行し、午後7時15分頃に到着。その後、各病院を訪問して被害者家族を慰問。

市長は以下の緊急対策を発表

  1. 「1219台北市緊急維安応変専門チーム」の設置:市長自らが指揮を執る
  2. 医療支援:「一案一社工」制度(社会福祉士制度)による全面的サポート、医療グリーンチャネルの開設
  3. 警備強化
    • MRT各駅に毎日70名の警察官を配置
    • 中央警政署から85名の増援部隊を要請
    • 駅、バス停、商業地区、人が集まる場所でのパトロール強化

週末の台北マラソンへの対応

12月21日・22日に予定されている台北マラソンについても、最高水準の警備体制で臨むことを表明。

行政院の対応

卓榮泰行政院長も午後8時に台北市警察局中正第一分局を訪れ、全国の鉄道、道路、MRT、空港などの重要地点で高度な警戒態勢を維持するよう指示。

現場での人々の行動

この悲劇的な事件の中で、いくつかの勇気ある行動も報告されている。

  • 台北駅で容疑者を制止しようとして犠牲になった余氏
  • 中山駅外で倒れた負傷者に即座に応急処置を施した女性医師
  • 誠品南西店のマクドナルド店員による迅速な避難誘導

蔣市長はこれらの人々を「正義感を持って立ち上がった市民」として称賛し、感謝の意を表した。

今後の課題と展望

この事件は、以下の重要な問題を浮き彫りにした。

  1. 指名手配犯の追跡システム:兵役逃れで指名手配されていた人物が、なぜ事前に拘束できなかったのか
  2. 公共交通機関の安全対策:発煙筒やガソリン弾などの危険物の持ち込み防止
  3. 精神衛生とサポート体制:犯行動機の解明と類似事件の予防
  4. 緊急対応体制:店舗や施設における危機管理マニュアルの重要性

最後に

当事件は台北在住日本人が日常的に利用するMRTで発生。住んでいる人なら誰しもが利用したことがある駅、店、道だったのが本当に怖い。台湾は治安が良いので、こういった凶悪事件が起きるとなおさら怖く感じる。おそらく逃げ惑う民衆の中には台北在住者はもちろん、観光で訪れている日本人もたくさんいたと思う。
無差別襲撃は予測が困難だが、

  • 不審な行動をする人物を見かけたら、すぐに駅員や警察に通報
  • 緊急時の避難経路を日頃から確認しておく
  • 事件発生時は指示に従って冷静に避難する

を心にとめて生活しようと思った。

ただ最後に一つ付け加えたいが、台湾は普段はとても治安が良い国だと思う。このような事件は日本でもどこでも起こりうる。この事件で「台湾って治安が悪い国なんだー」というような誤解はないようにしてほしい。

被害に遭われた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々の一日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。


ここから12月20日追記↓↓

【追記】新たに分かったこと

容疑者の詳細

新たに判明した情報

  • 学歴:桃園市内の高校で調理科、企業実習コースを卒業
  • 在学中の成績は良好で、高校3年時には「三井日本料理」で実習
  • 卒業後は進学せず就職
  • 過去に保安(警備員)として勤務
  • 志願兵として軍務に就いたが、外出中の飲酒運転により除隊処分を受けていた

計画的犯行の全容

警察が張容疑者のクラウドデータを解析した結果、2024年(昨年)から「2014年のMRT無差別殺傷事件」(以下鄭捷事件)を執拗に調べていたことが判明。2014年のMRT無差別殺傷事件についてはこちらWikipediaに情報がある。2025年10月以降は検索頻度が急増し、3ヶ月前から具体的な殺人計画を立てていたことが確認された。

計画の詳細:

  • 12月17日から南京西路の千慧旅館に宿泊し、室内でガソリン弾を製造
  • 中山区内の複数箇所で放火し、警察・消防を分散させるおとり作戦を実施
  • 犯行の時間・場所を表形式で詳細に計画
  • 発煙弾の投擲後に襲撃という手順を明確化

以下の写真が犯人の動きの時系列が良く分かる画像です。

購入品の詳細

蝦皮購物(Shopee)の声明によると、張容疑者が11月以降に購入した物品は以下

蝦皮購物(Shopee)は日本でいうAmazonのようなECサイトのこと。

  • ガソリン缶、スーツケース、防護用品
  • ガストーチ、ライター、キャンプ用小型ナイフ
  • 発煙弾と大型刃物は購入記録なし(別ルートで入手か)

警察が発見した物品:

  • 台北駅地下通路:サバイバルゲーム用品、発煙弾17個(未使用2個含む)、ガソリン瓶15本、戦術ベスト、刃物
  • 中正区の賃貸住宅:刃物4本、焼損したノートPC、ガソリン缶5個
  • 旅館の部屋:ガソリン瓶23本
  • 携帯電話は未発見

容疑者の逃走計画の可能性

誠品書店(百貨店)の従業員の証言により、張容疑者が事前に逃走ルートを下見していた可能性が浮上。墜落地点には通常、大人の身長ほどの高さの段ボール箱が積まれていたが、事件当日はたまたま撤去されていた。従業員は「張容疑者は段ボールの上に飛び降りて逃走するつもりだったのではないか」と推測。段ボールが撤去されていたことを知らず、コンクリート地面に直接墜落したことが致命傷となった可能性がある。以下ニュース記事に写真があります。
畏罪才跳樓? 誠品員工推測「根本想逃逸」但張文算錯一步:紙箱早清除

MRTの緊急対応

台北MRTの事件時の緊急対応措置

  1. 駅を通過(過站不停:本来なら台北駅で停車するところを停車せずに通過
  2. 改札フリー(免刷卡出站:全ての改札ゲートを開放し、カードのピッなしで退出可能に
  3. 即座の避難誘導放送

迅速な対応により、駅構内での二次被害を最小限に抑えることができたといわれている。

市民の助け合い

54歳の劉姓MRT職員は、機械室を守るため火災の消火作業中に煙を吸い込んで負傷。卓榮泰行政院長は「職責を全うした模範的行動」として表彰する意向を示す。

現場

  • 中山駅外で倒れた負傷者に、通りかかった女性医師が即座に応急処置
  • マクドナルドとスターバックスの店員が迅速にシャッターを下ろし、客を避難させる
  • 多くの市民が救急車を呼び、タクシーを止めて負傷者を病院に搬送
  • 心肺蘇生や止血処置を施した一般市民も

遺族の声

馬偕医院で死亡した蕭姓被害者の家族は、卓行政院長に対し「なぜ若者がこれほど大きな過ちを犯したのか、家庭・社会・教育の原因を解明してほしい」と訴えた。卓行政院長は動機解明後、必要な対策を実施すると約束。

賠償問題

張容疑者が死亡したことで、被害者への賠償が極めて困難になると専門家は指摘。2014年の鄭捷事件では犯人が逮捕され死刑判決を受けたため、生前に賠償命令が出されたが、今回は加害者が既に死亡しているため、法的な賠償請求が非常に難しい状況。

台北マラソン

12月21日開催予定の台北マラソンは予定通り実施されるが、蔣萬安市長は「最高水準の警備体制」で臨むことを表明。全国の主要交通拠点でも警備が大幅に強化される。

台湾社会への影響

この事件は2014年の鄭捷事件以来、10年ぶりの大規模無差別襲撃として台湾社会に衝撃を与えた。BBCなど国際メディアも「台湾では暴力犯罪率が低く、このような事件は極めて稀」と報道。

事件後も過度に恐れることなく、周囲への警戒を保ちながら日常生活を送ることが重要。心理的なケアが必要な方は、危機相談ホットライン1925をご利用ください。

以下のニュース記事を参考に書いています。
沿捷運站丟煙霧彈砍人釀3死 男子遭警包圍後墜樓不治
北市捷運煙霧彈攻擊 蔣萬安公布凶嫌身分
惡男張文扔煙霧彈持刀殺3人後墜樓身亡 全身搜出4刀具+汽油彈
北捷隨機傷人案 累計4死、6人輕重傷
北車、中山無差別殺人案…男為阻擋嫌犯遭砍死 妻子:他很有正義感
27歲通緝犯張文奪4命!「桃園北上租屋」北市刑大衝老家 鄰居曝為人
27歲張文北捷殺人! 桃檢證實「遷戶口沒申報」教召令無法送達通緝
恐攻嫌一路殺上樓! 麥當勞急拉鐵門「近10人躲櫃台」警持槍守門

北車恐攻! 北捷應變「過站不停、免刷卡」疏散
北捷恐攻》張文高中讀「餐飲建教班」成績好 昔實習地點曝
北捷砍人案「員警棄車狂奔」!目擊者:大家都在跑,就他們往裡衝
中山商圈突遇隨機殺人!店家「鎖門護客」救命關鍵
北捷中山砍人/堅守崗位!54歲捷運員工「保護機房」 民眾讚:不是人人都願意
死者家屬悲問「為何一個年輕人鑄下這麼大的錯誤」卓揆回應了
北捷隨機攻擊案!蝦皮澄清未購煙霧彈、長刀
張文墜樓身亡,受害者家屬賠償恐難討?黃揚明對比與鄭捷案最大差異

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!